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2022年6月の記事一覧

  • 北海道・清里ならではをぎゅっと一瓶に。じゃがいも焼酎「北海道 清里」

    「水の生まれる里」北海道・清里町。 北海道の北東部に位置する清里町には、その名の通り清らかな水と、綺麗な水が生んだゆったりとした風景が広がります。 清里町の名産品であるじゃがいも焼酎「北海道 清里」には、この土地ならではの魅力がぎゅっと詰まっています。 そんな「北海道 清里」は、その成り立ちから現在に至るまで、想いのバトンを綿々と繋いできました。 今回はじゃがいも焼酎「北海道 清里」に詰まった清里町ならではの魅力やこだわりをご紹介します。 実際に取材に行ったからこそ得られた生の情報をお届けしますので、ぜひご一読ください。 じゃがいも焼酎「北海道 清里」の原点から今に至るまで 製造当初から今まで町民から広く愛されるじゃがいも焼酎「北海道 清里」。 「北海道 清里」は、1975年に自治体主導の焼酎蔵として事業を開始して以来、50年弱の歴史があります。 その始まりから今に至るまで、さまざまな人の想いがバトンのように繋がれてきました。 町民の想いをカタチに 百名山・斜里岳から流れる清らかな水と肥沃な土壌。 そして雨の少ない環境と日本屈指の大規模農業を活かして、清里町では昔から馬鈴薯(ジャガイモ)や小麦、甜菜(ビート)といった畑作が盛んに行われてきました。 しかし、それらの農作物は出荷後にでんぷんや砂糖など、他の形に加工されてしまい、町としての特産品はない状態でした。 そういったなかで、町民の「清里町の誇れる特産品がほしい」という想いが生まれ、1975年に自治体主導でじゃがいも焼酎の事業を始めました。 戦時中、清里町からほど近い北見市で、じゃがいもからアルコール燃料を作る事業が行われていた背景もあり、「じゃがいもからアルコールができるのなら、焼酎もできるのではないか」という発想から、じゃがいも焼酎が生まれたそうです。 全くのゼロから手探り状態でのスタートを切った焼酎造り。 当時清里町に入庁したばかりのひとりの町職員が、街からの勅命を受け、焼酎造りという困難なプロジェクトに取り組むことになりました。 彼は明治時代からの歴史ある国立醸造試験所での約1年間の研修後、4年近い試験製作を行い、1979年に「じゃがいも焼酎 きよさと」として販売を開始しました。 発売当時は焼酎ブームだったことや生産量が少なかったことから「まぼろしの焼酎」と呼ばれるなど、焼酎ファンの間で密かに人気を集めていました。 リブランディング その後、複数の焼酎ブームに乗る形でじゃがいも焼酎「北海道 きよさと」の人気は拡大を続けました。 また、各時代に求められるように商品ラインナップを増やした結果、同時期に最大で20ほどのブランドがあったといいます。 さまざまなデザインやブランドが混在していた状況にありましたが、2010年代後半の焼酎ブームの落ち着きに伴い、デザインの変更に乗り出したのが当時製造担当の職員であった廣谷さんでした。 廣谷さんは網走で生まれ育ち、東京農業大学で醸造学を学んだのちに、焼酎の醸造を行うために2007年に清里町へやって来ました。 そして、ローカルデザインの第一人者である江戸川大学(当時)の鈴木輝隆教授の助力を得ながら、大黒大悟、天宅正、高田唯の3人のデザイナーを中心としたプロジェクトチームを立ち上げじゃがいも焼酎全体のリブランディングに取り組みました。 リブランディングとは事業や製品の世間からの「見られ方」を企業が目指すブランド像に近づけること。具体的には、コンセプトやパッケージ、ロゴなどの刷新を指す。 廣谷さんは「清里町の魅力と北海道らしさがはっきり伝わるデザインを目指しました」と話します。 リブランディングに際して、実際にデザイナーたちも清里町を訪れ、町民を巻き込みつつ、「清里町の魅力」について2年かけて話し合いました。 その後、2014年に「焼酎を日本のスタンダードから、世界のスタンダードへ」をコンセプトにリブランディングが完成。 リブランディングでは、コンセプトの刷新から商品ラインナップ、瓶の形状までも大きく変更され、じゃがいも焼酎「北海道 清里」は次の時代へ歩みを進めました。 「清里町ならでは」が詰まったじゃがいも焼酎「北海道 清里」 想いのバトンを繋ぎ続け、現在まで50年近く製造が続くじゃがいも焼酎「北海道 清里」。 これだけ長く愛される背景には「清里町ならでは」へのこだわりがあります。 ここでは、そのこだわりを2つご紹介します。 ・原材料へのこだわり・コンセプトへのこだわり 原材料へのこだわり じゃがいも焼酎「北海道 清里」の原材料は大きく分けて「じゃがいも」「水」「大麦」の3つ。 そのうち、じゃがいもと水は清里町産のものを100%使用しており、大麦も清里町が位置する北海道道東エリアのものを使用しています。 廣谷さんは「お酒造りというのは、でんぷん質や糖質を発酵させてアルコールに変化させるので、寒暖差の大きい清里町で作っているでんぷん質が多いじゃがいもはお酒造りととても相性がいいんです。それに、でんぷん質が多いかわりに他の成分が少ないので、余計な雑味が少なく、綺麗な焼酎が造りやすいんですよ。」と話します。 「水源地が斜里岳の山の方にあるので、水源地と醸造所がとても近く、水の品質がいいんです。うちの蔵で実際に仕込みに使っている水も、町で使われている水道水と同じ水を使用しています。」 つまり、斜里岳に近く水が美味しい、清里町ならではの気候と農作物が、じゃがいも焼酎「北海道 清里」の美味しさを作り出します。 コンセプトへのこだわり 2014年に行われたリブランディングでは、「清里町ならでは」がより伝わるようなコンセプトやデザインに刷新されました。 じゃがいも焼酎「北海道 清里」のボトルデザインには3つの丸のマークが配置されています。 実はこの3つの丸、それぞれに意味があり、清里町の「自然」と「農業」と「人々」を象徴しています。 世界自然遺産・知床にほど近く、美しい斜里岳を望むことができる豊かな自然。 その自然が生み出した水や気候を活かした清里町の農業。 そして何よりも、清里町の温かい人々。 廣谷さんは「仕事しているなかで町の人と関わる機会がありますが、農家さんや酒屋さんなどのお酒に関わる人だけでなく、本当にいろいろな人が温かく応援してくださる」と話します。 50年前の町民の「自慢できる特産品がほしい」という想いを次の世代に繋ぎ続け、今でも進化を続けるじゃがいも焼酎「北海道 清里」。 「清里町ならでは」をぎゅっと詰め込み、カタチにしたお酒でした。 【直接聞いてきた!】じゃがいも焼酎おすすめの飲み方 「本格焼酎」と聞くと少し癖がありそうでとっつきにくく感じますが、このじゃがいも焼酎はとても飲みやすいんです。 そのまま飲むだけでもとても美味しいのですが、さらに美味しく飲む方法があるそう。 普段からじゃがいも焼酎「北海道 清里」を愛飲する廣谷さんに、おすすめの飲み方を聞いてきました。 ー廣谷さんおすすめの飲み方はありますか? 〈原酒〉はお湯割り、〈樽〉はソーダ割がおすすめです! まずは本来の味わいを知ってもらって、そこからいろいろな楽しみ方を探していただければ嬉しいです。 また、町の若者からは、ジンジャエールで割ったり、紅茶やジャスミンティーで割ったりといった飲み方も聞きますね。 他にも、珍しいところで言うと、「パーシャルショット」という飲み方でもお楽しみいただけます。 アルコール度数の高いお酒を氷点下にして、お猪口でぐいっと飲むのですが、とろみがついてとても美味しいんですよ。 <樽>の貯蔵は圧巻だ。 ーいろいろな楽しみ方ができるんですね!普段はどういった楽しみ方をされているんですか? 私の場合は「原酒」を食中酒として飲むことが多いです。焼酎そのものを楽しみたいときは、味の濃いものや揚げ物などの脂っこいものとの相性がいいですね。 「スタンダード」はより癖が少ないので、幅広い料理に合わせることができます。 それこそ海鮮やじゃがいもサラダなどの素朴な味わいの料理と相性がいいですね。 ー全て美味しそう!北海道の地のものとの組み合わせはそそられますね! 居酒屋さんに提案するときも、じゃがいも料理との組み合わせなどを提案していますね。 揚げ芋を濃い味にして提供すると合いますよ、といった感じで。 ーいろいろ試してみようと思います! ありがとうございました! 「北海道 清里」どこで飲める? ここまでご紹介してきたじゃがいも焼酎「北海道 清里」は、オンラインショップや通販で購入することができます。 通販サイト 楽天やAmazonをはじめとした通販サイトで気軽に購入することができます。 自社出荷「北海道 清里 700ml」常温北海道 焼酎 じゃがいも ジャガイモ 酒 北海道産 お取り寄せ 贈り物 プレゼント お土産 お中元posted with カエレバ楽天市場Amazon 自社出荷「北海道 清里〈樽〉700ml」常温北海道 焼酎 じゃがいも ジャガイモ 酒 北海道産 お取り寄せ 贈り物 プレゼント お土産 お中元posted with カエレバ楽天市場Amazon 自社出荷「北海道 清里 原酒5年 700ml」常温北海道 焼酎 じゃがいも ジャガイモ 酒 北海道産 お取り寄せ 贈り物 プレゼント お土産 お中元posted with カエレバ楽天市場Amazon オンラインショップ 清里焼酎醸造所の公式オンラインショップでも購入することができます。 メジャーな3種類だけでなく、飲み比べなどの様々なサイズを取り扱っています。 最後に 今回ご紹介したじゃがいも焼酎「北海道清里」。 様々な人の想いを持った行動や、その想いに感化された人の応援で、これまで50年もの歴史を作ってきました。 さらには、リブランディングを経て、日本国内だけでなく世界を見据えるようになりました。 世界のスタンダードとしてのじゃがいも焼酎をこれからの50年間で造っていくのでしょう。 北海道清里町ならではがぎゅっと詰まった「北海道 清里」。 ぜひ飲んでみてください。

  • 「受け継いで今後に繋いでいく」北海道・清里町でじゃがいも焼酎を造る廣谷さんの想い

    世界自然遺産知床からほど近く斜里岳が悠然とたたずむ美しい町、北海道・清里町。 ここには、自然豊かな清里町の恵みを最大限活かした焼酎造りを営む「清里焼酎醸造所」があります。 そこで主査として清里焼酎醸造所を統括する廣谷さんは、ある想いを持って焼酎造りに取り組んでいます。 今回は廣谷さんに、綿々と受け継がれてきた焼酎造りにかける想いや、今後の展開についてお話をお伺いします。 清里焼酎醸造所主査・廣谷さん 清里焼酎醸造所1975年に、「清里町産として誇れる特産品が欲しい」という町民の声から、日本で初めてとなるじゃがいも焼酎造りを開始。原材料のほとんどが清里町産であり、製造開始から約50年経つ現在でも、町民の間で広く愛されています。2014年にはリブランディングを行うなど、今後さらに世に広まっていくことが期待されます。 清里焼酎醸造所ご提供写真 詳しくはこちらの記事をご一読ください。▼清里焼酎醸造所・じゃがいも焼酎の記事はこちら!<紹介記事リンク> ご経歴:醸造学科を卒業し焼酎の道へ ー本日はよろしくお願いいたします。まずは簡単にご経歴をお伺いできますか? よろしくお願いします。 北海道網走市で生まれ育ち、高校時代に「発酵」に興味を持ちました。その後、東京農業大学醸造科学科に進学して微生物について学びました。 大学卒業後にご縁があり、北海道に戻ってきて、この焼酎蔵で働いています。 現在は勤めてから15年が経ち、主査として「焼酎造り」に広く携わっています。 ーなかなか面白いご経歴ですね!なぜ高校時代に「発酵」というニッチな分野に興味を持たれたのでしょうか? 大きく何かきっかけがあったというわけではないのですが、理由の一つに、お酒などの発酵食品に興味があったことが挙げられます。 また、今でいうSDGsのような環境的持続性を考えるなかで、これからの社会において「発酵」は重要で、微生物を使った醸造学が盛り上がるのではないかと思いました。 専攻としては「酒造り」ではなく、微生物を使った「環境改善」がテーマでしたが、当時学んだことは今でも仕事に繋がっています。 ー先見の明がすごいですね!大学で学ばれた後に、就職に際してUターン(地元に帰って働くこと)されたんですね。 高校時代まで北海道で暮らしていて、働くならやっぱり自分の生まれた場所で働きたいという思いがありました。 その当時、この清里醸造所も後継者がいないということで大学の醸造科に募集をかけていまして、そこで私が手を挙げた形です。 当時の所長は、事業を始めた頃から焼酎造りを一身に受け持ってこられた方で、お酒造りの知識や設備が全く何もないところから、設計など醸造を確立されたんです。 話を聞いてみて、「この人の下でなら働いてみたい」と思い、ここで働くことにしました。 清里焼酎醸造所ご提供写真 新しい焼酎のあり方を考える:リブランディングへの取り組み ー焼酎造りに携わって15年、さらに現在は主査という立場で焼酎造りを統括されていらっしゃいますが、具体的にどのようなお仕事をされていらっしゃいますか? あまり大きくない醸造所ということもあり、醸造から販売まで、自分ができることはなんでも手広く携わっていますね。 醸造のシーズンは醸造にかかりっきりになってしまいますが、それ以外のシーズンは展示商談会に出展したり、取引先への挨拶周りも行っています。 ーこれまでの15年間で印象深い取り組みはありましたか? 2012年ごろから、じゃがいも焼酎全体のリブランディングに取り組みました。 新しい焼酎のあり方を考えながら、職場環境の変化もあったので、変化が多く大変な時期でしたね。 <リブランディングとは・カード挿入> 清里焼酎醸造所ご提供写真 ーデザインがとにかくかっこいい!リブランディングに取り組んだ理由や背景は何かあったのでしょうか? 2003年から続いていた本格焼酎ブームの落ち着きによって売り上げが目に見えて落ちていたことと、その施策として商品種類を増やしていたことがあります。 売り上げに対して何か手を打たなければいけないと考えていました。 そのうえ、商品種類が増えれば増えるほど経費がかかってきますし、デザイン的なばらつきも気になっていたので、デザインを変更できないか、個人的に取り組んでいました。 そんなとき、当時江戸川大学の教授だった、ローカルデザインの第一人者である鈴木輝隆氏のご助力をいただくことになり、デザイン事務所と一緒に焼酎全体のリブランディングに取り組むことになりました。 清里焼酎醸造所ご提供写真 ーリブランディングにおいて廣谷さんはどのような関わり方をされたのでしょうか? デザインをするにあたって、私たち清里町がどのようなことを伝えたいのか、また何を軸にするのかということを明確にする必要がありました。 デザイナーの方にも実際に清里町に来ていただいて、清里町の景観をはじめとした街のイメージを掴んでいただき、私たち職員だけでなく一般の町民の方々を巻き込んで、その軸を決めていきました。 新しいロゴやボトルデザイン、コンセプトに至るまで、全てそのとき決めた軸を中心に作られています。 ▼詳しいリブランディングの話はこちらの記事をご一読ください。 <紹介記事へのリンク> 「受け継いで今後に繋いでいく」廣谷さんの想い 50年近く伝統が続くじゃがいも焼酎を、ただ守るだけでなく、より広く伝えるために“攻め”の施策に取り組む廣谷さん。ここからは廣谷さんの想いについてお話をお伺いします。 ー焼酎造りに携わって15年、さらに現在は主査という立場で焼酎造りを統括されていらっしゃいますが、どのような想いでいらっしゃいますか? これまで50年近く、町民に愛されながら綿々と受け継がれてきたじゃがいも焼酎を受け継いで今後に繋いでいくというのが私の使命であると思っています。 ー素敵ですね!そのような想いをお持ちになった理由は何でしょうか? そもそもじゃがいも焼酎ができたきっかけが、町民の「清里町産として誇れる特産品が欲しい」という想いなんです。 そして、そのような町民の想いをじゃがいも焼酎の生みの親である故・長屋氏が何もない状態からカタチにしていきました。 そのような綿々と紡がれた想いを引き継いだからこそ、清里町が存続する限りじゃがいも焼酎を造り続けていきたいと思います。 そして、これまでの担当者がゼロから作り上げた焼酎の造り方や売り方などを含めて今後の世代に繋いでいきたいですね。 世界を見据えて足元を固める ー今後、そのような想いを伝えていくためにどのような人々に届けたいと思いますか? 第一に、焼酎好きの方に「こんな焼酎もあるんだよ」とお知らせしていきたいです。 それに加え、北海道の本格焼酎に馴染みのない人たちがたくさんいるので、「北海道の地酒としてこんなものがあるんだよ」というのを広く知っていただきたいなと思います。 とはいえ、じゃがいも焼酎の認知度自体がまだまだ低い状態です。 じゃがいも焼酎ってこういうものなんだよ、というところから丁寧に伝えていくことが必要だと考えています。 ー2014年には大々的なリブランディングも行われていますよね。リブランディングをされていかがでしたか? 前のデザインだと焼酎好きの方が買っていくイメージが強かったんですけど、デザイン変更後は普段焼酎を飲まない人にも手に取って選んでいただけるというパターンが増えてきましたね。 本格焼酎は「癖が強い」「飲みづらい」というイメージが先行していますが、うちのじゃがいも焼酎は親しみやすく、焼酎を飲みたがらない方にも受けやすい仕上がりにしています。 品質の特徴とパッケージがぐっと近づいたことで、お客さんにも手に取っていただきやすくなりました。 ー僕もパケ買いしてしまいました!(笑)商品メッセージに「焼酎を世界のスタンダードに。」とありますが、世界を見据えていらっしゃるんでしょうか? ありがとうございます!(笑) でも、世界的に見れば焼酎自体はまだまだニッチでこれからの段階です。 ただ、世界中にあるお酒のなかでも、同じジャンルでこれだけ原材料の幅がある蒸留酒は非常に珍しいんです。そのなかでも、微生物や麹を使って造る焼酎は非常に稀だと言われています。 「SAKE」や「ジャパニーズウイスキー」が世界的にも高く評価されていますが、それらの人気に焼酎も続いていきたいですね。 ー世界に広がるじゃがいも焼酎、楽しみです!今日はありがとうございました! 取材の終わりに たくさんの人の想いのバトンが形になったじゃがいも焼酎「北海道・清里」。 ただ伝統を守るだけでなく、今後の未来を見据えて一本一本丁寧に造られていました。 丸みを帯びた優しい味わいで、これまで焼酎に触れてきていない人にもおすすめです。 知床に行ったら絶対に飲んでみてほしい、そんな逸品でした。 <購入リンク挿入>

  • 【日本一面白い】仕掛けだらけの水族館・北の大地の水族館

    ハッカとカーリングの街・北海道北見市。オホーツク海から大雪山まで伸びる、東西で100kmほどの距離がある北海道一大きい自治体です。 その北見市内留辺蘂(るべしべ)町というオホーツク海から約70kmほどの内陸部に「北の大地の水族館(山の水族館)」があります。 この北の大地の水族館、一周の所要時間が約20分ほどの小さな水族館ですが、ここならではの尖った展示や仕掛けで日本全国にファンがいます。 今回は、そんな北の大地の水族館をご紹介します。 実際に取材に行ったからこそわかる生の情報が詰まっています。 ぜひ最後までご一読ください。 北の大地の水族館とは? 北の大地の水族館・ご提供写真 北の大地の水族館は、1978年に「山の水族館・郷土館」として開業しました。 開業当時、山の水族館の横を通る国道39号線は、札幌から旭川や層雲峡を抜けて北見、網走に抜ける観光の主要国道で、それに伴い温根湯温泉エリア全体が栄えていました。 その頃、網走には「オホーツク水族館」という水族館があり、当時の町長の「網走に海の展示があるのだから、川沿いに山の中の水族館があってもいいじゃないか」という発想で開業することになりました。 海から離れていたこともあり、海水を取水することが難しく、川魚のみの展示でスタートしました。 水族館プロデューサー・中村元氏がリニューアルを手がける たくさんの地元の人たちや観光客から愛された旧山の水族館ですが、開業から30年以上経ち、施設の老朽化が目立ったため、2012年にリニューアルすることになりました。 そのリニューアルに大きく関わったのが日本で唯一の水族館プロデューサーである中村元氏。 中村氏は鳥羽水族館や新江ノ島水族館、サンシャイン水族館などのさまざまな水族館のリニューアルに携わってきました。 中村氏の手法として「水塊 (すいかい)」と呼ばれる、まるで水中にいるかのような感覚と「行動展示」という、ただ生き物を見せるのではなく生態に即して動く姿を見せる二つの手法があります。 この北の大地の水族館でもその二つの手法を随所に見ることができます。 館長の想い「とにかく水族館を楽しんでほしい」 北の大地の水族館・山内館長 リニューアル時からさまざまな展示や企画に携わってきた山内館長は、「とにかく水族館を楽しんでほしい」という想いから、展示の見せ方やお客さんとの接し方など、全てにおいて「ゲストを楽しませる」という軸を大切にされています。 ▼詳しい山内さんの想いを伺った記事はこちら! https://spark-pjt.com/onneyu-aq-interview/ ここにしかない!?北の大地の水族館ならではの展示 ここからは、中村氏や山内館長をはじめとするたくさんの人々が作り上げた、北の大地の水族館ならではの展示についてご紹介します。 北の大地の水族館が位置する北海道・道東の大自然、そして、温根湯温泉エリアの魅力である「豊かな自然環境」「厳しい自然」「豊富な温泉」をダイレクトに感じることができる展示がたくさんあります。 【まるで水中世界】滝つぼ水槽 引用:https://www.photo-ac.com/main/detail/2980134 北の大地の水族館に入ると、はじめに滝つぼ水槽が目に入ります。 ここでは、まるで滝つぼを水中から見上げているような浮遊感を感じることができます。 実はこの滝つぼ水槽ですが、水中感や浮遊感を楽しんでもらうために、さまざまなこだわりが隠されているんです。 その一つが「あえて滝を見せないこと」です。 滝つぼ水槽は、実際の滝と同じように水を高さをつけて落とすことで作られています。 また、水中の循環ポンプで水中から水上に向けて噴き上げるように泡を作ることで、より自然な水中感や浮遊感を感じることができます。 ただ、「滝を見る」のではなく「水中世界を感じてほしい」という想いから、あえて滝の部分は見せないようにしているそうです。 また、もう一つのこだわりが「生態に合った展示方法」です。 滝つぼ水槽で展示されている可愛らしい淡水魚・オショロコマ。 彼らは実際に川の上流に生息しており、滝つぼの縁に多く見られるそうです。 この水族館でも、その姿を再現するために滝から餌を落として水槽の上部に誘導するなど、オショロコマの自然の姿を見ることができるよう、こだわりが隠されています。 【冬は水面が凍る!?】四季の水槽 一つ目の水槽を抜けると見えてくるのが「四季の水槽」。 この水槽は実際に外と繋がっていて、春夏秋冬と毎シーズンごとの北海道の川の水中世界を再現しています。 取材に伺った初夏はエゾウグイが気持ちよさそうに泳いでいましたが、秋口にかけてヤマメや鮭、カラフトマスなど、そのシーズンに合った魚が展示されるので、どの季節に行っても楽しむことができます。 特に目を引くのが「冬の四季の水槽」。 北の大地の水族館・提供写真 外気に触れているので、冬の寒い時期にはこの水槽の表面が凍ります。 旧山の水族館時代には、冬は閉館していましたが、リニューアルに伴い冬も営業を行うことになりました。 北海道の冬は寒さが厳しく、なかなか来館客を引き付けることが難しいと予想されました。 そこで、その寒さを逆手にとって「寒いからこそ見える景色」でお客さんを呼び込もうとしてできたのが四季の水槽。 北の大地の水族館・提供写真 冬の時期の水槽の掃除は、氷の表面に穴を開けて潜水して行います。 一年に2回しか見ることができない冬の掃除のシーン、見逃せませんね。 【日本最大級の淡水魚】イトウの展示 日本最大級の淡水魚である「イトウ」の展示は大迫力。 北の大地の水族館では、イトウの展示に力を入れていて、大きく育ったイトウだけでなく、卵や稚魚も展示しています。 ここまで大きく育つことができるのは、その生息地が栄養豊富だということの証拠。 つまり、北海道の豊かな土壌をイトウの姿から見て取ることができます。 実は昔、イトウは全道的に生息していましたが、現在はその生息域がどんどん縮小しています。 山内館長は「イトウってすごい大きな魚なんだね!すごいね!と感じてもらうことで、自然界での実際のアクションをする人が一人でも増えればいい」と話します。 さらに、山内館長は「イトウは北海道の川や湖においてのアンブレラ種です」と続けます。 「アンブレラ種であるイトウを守ることが、北海道の豊かな河川・湖の環境を守ることにつながります。展示をきっかけにイトウに興味を持ってくれたら嬉しいです。」 ▼アンブレラ種とは地域の生態ピラミッドの頂点にある生き物で、アンブレラ種が生育できる環境を保護することで、その傘下にあるほかの種の生育までをも保全することができ、広い面積にわたる生物の多様性が保たれることになるという保全上の戦略的な考え方。 北海道の豊かな自然に思いを馳せながら、水の中をゆったり泳ぐイトウをぜひ一度見に来てください。 【温泉水で育てた熱帯魚】世界の熱帯魚コーナー 最後にご紹介するのは「世界の熱帯魚コーナー」。 ここで展示されている熱帯魚は、水族館のある温根湯温泉の温泉水で育てられます。 旧山の水族館時代に、冬の閉館時に温泉水で飼育したところ、魚の傷の治りが早かったり、生育が少し早かったことから、温泉水が利用されるようになったそうです。 来館客を楽しませるたくさんの仕掛けへのこだわり 北の大地の水族館では、「お客さんを楽しませる」さまざまな仕掛けへのこだわりが散りばめられています。 数えきれないほどある仕掛けですが、ここでは3つご紹介します。 独創性あふれる手作りのPOP 北の大地の水族館では、各展示の周りに独創性あふれる手作りのポップが所狭しと貼られています。 ニジマスとのLINEのトーク画面やプロフィール帳を模した「うおふぃーる帳」など、刺さる人にはとことん刺さるPOPを楽しむことができます。 館長が出てくるボタン Twitterで一躍有名になったのがこの「館長が出てくるボタン」。 少しでも館内でのコミュニケーションを増やしたい、との想いで2020年の夏に山内館長がスタートしたこの仕掛け。 ボタンを押すと山内館長が出てきて会話をすることができます。 このボタンを設置した詳しい想いや背景については、ぜひインタビュー記事をご覧ください。 https://spark-pjt.com/onneyu-aq-interview/ いただきますライブ イトウの水槽で行われる「いただきますライブ」。 自然では当たり前のように行われているものの、普段は目にすることができない生の「捕食」を目の当たりにすることができます。 ※現在一時的に開催が休止されています。詳しくはHPをご確認ください。 【施設情報】料金・アクセス 施設名北の大地の水族館(山の水族館)公式サイトhttps://onneyu-aq.com/営業情報(営業時間)8:30~17:00 (4月~10月) 9:00~16:30 (11月~3月) 料金一般:670円中学生:440円 小学生:300円支払い方法現金のみアクセス〒091-0153 北海道北見市留辺蘂(るべしべ)町松山1-4車で行く場合(北見市街から) 国道39号線で約40分(旭川市街から) 国道39号線で約2時間30分公共交通機関を使う場合(電車) JR留辺蘂駅から道の駅おんねゆ温泉行きバス約20分。終点下車後徒歩2分。(バス) バスの時刻表は公式HPより駐車場情報あり(無料)普通車37台/身障者用2台

  • 「水中世界を楽しんでほしい」北の大地の水族館館長・山内創さんの想い

    北海道北見市から車で1時間ほどの場所にある「北の大地の水族館(山の水族館)」。 ここは他の水族館とは一味違う、館内には来館者を楽しませる仕掛けだらけの「徹底的にふざける」水族館。 その背景には、2012年のリニューアル当初から中心にいる山内さんの姿があります。 今回は山内館長に、北の大地の水族館にかける想いや、さまざまな仕掛けの裏側についてお話をお伺いします。 北の大地の水族館館長・山内創さん 北の大地の水族館1978年に開業。2012年には水族館プロデューサーである中村元氏が手がけ、リニューアルオープン。「滝つぼ水槽」を代表とする目を引く水槽や独自性のある展示など、来館者を楽しませる仕掛けが各所に散りばめられています。 ご経歴:移住して水族館の館長に ー本日はよろしくお願いします。まず簡単にご経歴のご説明をお伺いできますか? よろしくお願いします! 愛知県で生まれ、小さい頃から魚をはじめとする生き物が大好きでした。 自分で生き物を育てていた経験から、いつか水族館の飼育員になりたいと思っていました。 大学では海洋系の学部に所属し、その後にここ、北の大地の水族館にて採用され、小さい頃からの夢を叶えることができました。 ー縁もゆかりもない北海道に移住ですか!不安はありませんでしたか? 当時は「どこでもいいから水族館で働きたい」という思いの方が強かったです。 むしろ小さい頃からの夢を叶えられるということで高揚感もありました。 働き始めてからスタッフやお客さんなど、いろいろな人と関わることで、よりこの水族館のことが好きになりましたね。 今は館長として、普段の水族館の運営からさまざまな企画まで携わっています。 「とにかく水族館を楽しんでほしい」 2012年のリニューアル当初より水族館の運営に携わってきた山内さん。水族館での勤務を通して、館長になった現在まで、ある想いを大切にしていると言います。 すごくシンプルですが「とにかく水族館を楽しんでほしい」という想いで普段お客様と接しています。 「どうやったら楽しんでもらえるか」、それだけを考えて館内での仕掛けやさまざまな活動に取り組んでいます。 ーその想いを抱くようになったきっかけは何かあったのでしょうか? 実際に水族館で働いた経験が大きいです。 それこそ学生時代は「水族館は生物を見せる場所であって、生き物のことを正しく伝えることが重要」だと考えていました。 でも働き始めてから、お客さんがすごく楽しんでくれている姿を見る機会がたくさんありました。 そのときに「水族館は訪れる人にとって、ただいるだけでも楽しい場所なんだ!」と気付きました。 私自身は魚がすごく好きで、魚を見ているだけで楽しいんです。 でも、一般の人がそうでないことは、知識として知っていても実感はなかったんですね。 実際に働き始めて、老若男女いろいろなお客さんの姿を見て、「別に魚を好きじゃなくても楽しんでくれているんだ!」というのをちゃんと感じることができました。 だからこそ、魚が好きではない人にも楽しんでもらえるような、親しみやすい水族館を目指しています。 ーそうなんですね。それでいうと館内のさまざまな仕掛けでは「楽しませてやる」という気持ちをひしひしと感じます。(笑) 結局、水族館が楽しくないと魚のことを知ろうと思ってもらえないんですよね。 ポップなどの仕掛けを通して「楽しかったね!また来たいね!」と思わせることで、魚を好きになってもらう第一歩になるんじゃないかと思います。 そして「あの水族館楽しかったね」の思い出の中に一つでも、「そういえばさ、あの魚って〇〇らしいよ。」といった会話があれば嬉しいです。 普段は「どうやったらお客さんに楽しんでもらえるか」ばっかり考えていますし、だからこそ、LINE風の紹介やプロフィール帳を模した展示などを作って、楽しんでもらえるように心掛けています。 「全力でふざける」さまざまな仕掛け 山内さんが館長を務める「北の大地の水族館(山の水族館)」には、「とにかく水中世界を楽しんでほしい」という想いをカタチにしたさまざまな仕掛けがあります。 その仕掛けについて「全力でふざけることが大事」と話す山内館長。 最大公約数を狙うのではなく、刺さる人にとことん刺さるように作られているんです。 だからこそ、北の大地の水族館では他の水族館では見ることができない珍しい仕掛けを楽しむことができます。 その一つが「館長が出てくるボタン」。 ーTwitterでもバズっていた「館長が出てくるボタン」。なぜ始められたのでしょうか? さまざまな狙いはありますが、最初はとにかく暇で作りました(笑) このボタンは2020年の7月に設置したのですが、当時は緊急事態宣言による休館や、開館していてもお客さんが来ない状態が続きました。 やっぱりお客さんに楽しんでもらうことが自分の楽しみなので、お客さんが来ないと寂しくてかまってほしくて、勝手に設置してしまいました。(笑) 設置当時は面白がってもらえるかな、とは思っていましたが、まさかこんなにバズるとは思っていませんでした。 ーちなみにどのような狙いがあったのでしょうか? 館内でのコミュニケーションを増やすことが狙いでした。 当館は小さな水族館で20〜30分で一周してしまうんです。 でも、小さい水族館の中でお客さんとのコミュニケーションを増やすことで、滞在時間も増えて満足度も高くなる。 そしてさらに、私たちが伝えたいことを伝えやすくなると考えました。 ー結構押されるお客さんは多いんですか? 正直なところあまりいません。月に10回ほどです。 押してくれるお客さんも、「これを聞きたい!」という内容があるというよりも、この発想を面白がってボタンを押してくれる方ばかりですね。 「面白かった展示は?」「好きな魚は?」など、私から質問することもあります。 とにかく水族館を楽しんでもらうきっかけになっていたら嬉しいです。 北見市民に愛着を持ってもらえる水族館をめざす 山内さんの「楽しませたい」という想いはとどまるところを知らない。 今後の展望を話していただきました。 ー今後、その想いをどのような人に届けていきたいといった展望はお持ちですか? 水族館の足元である北見市の人たちに「地元の水族館」という意識を持ってほしいです。 北見市は10数年前に一市三町が合併してできた道内で一番広い自治体なんです。 端から端まで100kmもあるほど広く、しかも水族館はその端に位置します。 北見市内には、北の大地の水族館が北見市の施設だと認識していない人がたくさんいます。 それってすごくもったいないし、寂しいですよね。 今はとにかく北見市の市民に「まちの水族館」だと感じてほしいです。 きっと観光客も、地元の人が楽しいよって言ってるところに行きたいのではないかと思います。 ー素敵ですね!今後北見市の人たちに対して何か新しい仕掛けは考えられていらっしゃいますか? 今年でリニューアルオープンから10年を迎えますが、その10周年記念事業として「出前水族館」を開催します。 とても広い北見市、その中の一つ一つの自治体をまわって、一日水族館をお楽しみいただきます。 移動式だからこそ楽しんでいただけるような、さまざまなコンテンツを用意しています。 ▼出前水族館について詳細はこちら!https://www.city.kitami.lg.jp/administration/news/detail.php?news=854 他には、より親しみやすい水族館になるためにガイドツアーができたらいいなと考えています。 ぜひそのツアーの中でも全力でふざけて楽しませていきたいですね。 ー山内さんの「全力でふざける」。今後も楽しみにしています!今日はありがとうございました。 取材の終わりに 今回訪れた「北の大地の水族館」。 小さいながらもその密度は今まで体感したことのないほどで、「楽しんでほしい」をピュアに突き詰めた、山内さんをはじめとする飼育員の方々の努力を垣間見ることができました。 今回の取材で2回目の来訪。きっと3回目のタイミングは思ってるよりも早く来るのだろう。 ぜひ道東に行くときは一度訪れてみてください。

  • 北海道・清里ならではをぎゅっと一瓶に。じゃがいも焼酎「北海道 清里」

    「水の生まれる里」北海道・清里町。 北海道の北東部に位置する清里町には、その名の通り清らかな水と、綺麗な水が生んだゆったりとした風景が広がります。 清里町の名産品であるじゃがいも焼酎「北海道 清里」には、この土地ならではの魅力がぎゅっと詰まっています。 そんな「北海道 清里」は、その成り立ちから現在に至るまで、想いのバトンを綿々と繋いできました。 今回はじゃがいも焼酎「北海道 清里」に詰まった清里町ならではの魅力やこだわりをご紹介します。 実際に取材に行ったからこそ得られた生の情報をお届けしますので、ぜひご一読ください。 じゃがいも焼酎「北海道 清里」の原点から今に至るまで 製造当初から今まで町民から広く愛されるじゃがいも焼酎「北海道 清里」。 「北海道 清里」は、1975年に自治体主導の焼酎蔵として事業を開始して以来、50年弱の歴史があります。 その始まりから今に至るまで、さまざまな人の想いがバトンのように繋がれてきました。 町民の想いをカタチに 百名山・斜里岳から流れる清らかな水と肥沃な土壌。 そして雨の少ない環境と日本屈指の大規模農業を活かして、清里町では昔から馬鈴薯(ジャガイモ)や小麦、甜菜(ビート)といった畑作が盛んに行われてきました。 しかし、それらの農作物は出荷後にでんぷんや砂糖など、他の形に加工されてしまい、町としての特産品はない状態でした。 そういったなかで、町民の「清里町の誇れる特産品がほしい」という想いが生まれ、1975年に自治体主導でじゃがいも焼酎の事業を始めました。 戦時中、清里町からほど近い北見市で、じゃがいもからアルコール燃料を作る事業が行われていた背景もあり、「じゃがいもからアルコールができるのなら、焼酎もできるのではないか」という発想から、じゃがいも焼酎が生まれたそうです。 全くのゼロから手探り状態でのスタートを切った焼酎造り。 当時清里町に入庁したばかりのひとりの町職員が、街からの勅命を受け、焼酎造りという困難なプロジェクトに取り組むことになりました。 彼は明治時代からの歴史ある国立醸造試験所での約1年間の研修後、4年近い試験製作を行い、1979年に「じゃがいも焼酎 きよさと」として販売を開始しました。 発売当時は焼酎ブームだったことや生産量が少なかったことから「まぼろしの焼酎」と呼ばれるなど、焼酎ファンの間で密かに人気を集めていました。 リブランディング その後、複数の焼酎ブームに乗る形でじゃがいも焼酎「北海道 きよさと」の人気は拡大を続けました。 また、各時代に求められるように商品ラインナップを増やした結果、同時期に最大で20ほどのブランドがあったといいます。 さまざまなデザインやブランドが混在していた状況にありましたが、2010年代後半の焼酎ブームの落ち着きに伴い、デザインの変更に乗り出したのが当時製造担当の職員であった廣谷さんでした。 廣谷さんは網走で生まれ育ち、東京農業大学で醸造学を学んだのちに、焼酎の醸造を行うために2007年に清里町へやって来ました。 そして、ローカルデザインの第一人者である江戸川大学(当時)の鈴木輝隆教授の助力を得ながら、大黒大悟、天宅正、高田唯の3人のデザイナーを中心としたプロジェクトチームを立ち上げじゃがいも焼酎全体のリブランディングに取り組みました。 リブランディングとは事業や製品の世間からの「見られ方」を企業が目指すブランド像に近づけること。具体的には、コンセプトやパッケージ、ロゴなどの刷新を指す。 廣谷さんは「清里町の魅力と北海道らしさがはっきり伝わるデザインを目指しました」と話します。 リブランディングに際して、実際にデザイナーたちも清里町を訪れ、町民を巻き込みつつ、「清里町の魅力」について2年かけて話し合いました。 その後、2014年に「焼酎を日本のスタンダードから、世界のスタンダードへ」をコンセプトにリブランディングが完成。 リブランディングでは、コンセプトの刷新から商品ラインナップ、瓶の形状までも大きく変更され、じゃがいも焼酎「北海道 清里」は次の時代へ歩みを進めました。 「清里町ならでは」が詰まったじゃがいも焼酎「北海道 清里」 想いのバトンを繋ぎ続け、現在まで50年近く製造が続くじゃがいも焼酎「北海道 清里」。 これだけ長く愛される背景には「清里町ならでは」へのこだわりがあります。 ここでは、そのこだわりを2つご紹介します。 ・原材料へのこだわり・コンセプトへのこだわり 原材料へのこだわり じゃがいも焼酎「北海道 清里」の原材料は大きく分けて「じゃがいも」「水」「大麦」の3つ。 そのうち、じゃがいもと水は清里町産のものを100%使用しており、大麦も清里町が位置する北海道道東エリアのものを使用しています。 廣谷さんは「お酒造りというのは、でんぷん質や糖質を発酵させてアルコールに変化させるので、寒暖差の大きい清里町で作っているでんぷん質が多いじゃがいもはお酒造りととても相性がいいんです。それに、でんぷん質が多いかわりに他の成分が少ないので、余計な雑味が少なく、綺麗な焼酎が造りやすいんですよ。」と話します。 「水源地が斜里岳の山の方にあるので、水源地と醸造所がとても近く、水の品質がいいんです。うちの蔵で実際に仕込みに使っている水も、町で使われている水道水と同じ水を使用しています。」 つまり、斜里岳に近く水が美味しい、清里町ならではの気候と農作物が、じゃがいも焼酎「北海道 清里」の美味しさを作り出します。 コンセプトへのこだわり 2014年に行われたリブランディングでは、「清里町ならでは」がより伝わるようなコンセプトやデザインに刷新されました。 じゃがいも焼酎「北海道 清里」のボトルデザインには3つの丸のマークが配置されています。 実はこの3つの丸、それぞれに意味があり、清里町の「自然」と「農業」と「人々」を象徴しています。 世界自然遺産・知床にほど近く、美しい斜里岳を望むことができる豊かな自然。 その自然が生み出した水や気候を活かした清里町の農業。 そして何よりも、清里町の温かい人々。 廣谷さんは「仕事しているなかで町の人と関わる機会がありますが、農家さんや酒屋さんなどのお酒に関わる人だけでなく、本当にいろいろな人が温かく応援してくださる」と話します。 50年前の町民の「自慢できる特産品がほしい」という想いを次の世代に繋ぎ続け、今でも進化を続けるじゃがいも焼酎「北海道 清里」。 「清里町ならでは」をぎゅっと詰め込み、カタチにしたお酒でした。 【直接聞いてきた!】じゃがいも焼酎おすすめの飲み方 「本格焼酎」と聞くと少し癖がありそうでとっつきにくく感じますが、このじゃがいも焼酎はとても飲みやすいんです。 そのまま飲むだけでもとても美味しいのですが、さらに美味しく飲む方法があるそう。 普段からじゃがいも焼酎「北海道 清里」を愛飲する廣谷さんに、おすすめの飲み方を聞いてきました。 ー廣谷さんおすすめの飲み方はありますか? 〈原酒〉はお湯割り、〈樽〉はソーダ割がおすすめです! まずは本来の味わいを知ってもらって、そこからいろいろな楽しみ方を探していただければ嬉しいです。 また、町の若者からは、ジンジャエールで割ったり、紅茶やジャスミンティーで割ったりといった飲み方も聞きますね。 他にも、珍しいところで言うと、「パーシャルショット」という飲み方でもお楽しみいただけます。 アルコール度数の高いお酒を氷点下にして、お猪口でぐいっと飲むのですが、とろみがついてとても美味しいんですよ。 <樽>の貯蔵は圧巻だ。 ーいろいろな楽しみ方ができるんですね!普段はどういった楽しみ方をされているんですか? 私の場合は「原酒」を食中酒として飲むことが多いです。焼酎そのものを楽しみたいときは、味の濃いものや揚げ物などの脂っこいものとの相性がいいですね。 「スタンダード」はより癖が少ないので、幅広い料理に合わせることができます。 それこそ海鮮やじゃがいもサラダなどの素朴な味わいの料理と相性がいいですね。 ー全て美味しそう!北海道の地のものとの組み合わせはそそられますね! 居酒屋さんに提案するときも、じゃがいも料理との組み合わせなどを提案していますね。 揚げ芋を濃い味にして提供すると合いますよ、といった感じで。 ーいろいろ試してみようと思います! ありがとうございました! 「北海道 清里」どこで飲める? ここまでご紹介してきたじゃがいも焼酎「北海道 清里」は、オンラインショップや通販で購入することができます。 通販サイト 楽天やAmazonをはじめとした通販サイトで気軽に購入することができます。 自社出荷「北海道 清里 700ml」常温北海道 焼酎 じゃがいも ジャガイモ 酒 北海道産 お取り寄せ 贈り物 プレゼント お土産 お中元posted with カエレバ楽天市場Amazon 自社出荷「北海道 清里〈樽〉700ml」常温北海道 焼酎 じゃがいも ジャガイモ 酒 北海道産 お取り寄せ 贈り物 プレゼント お土産 お中元posted with カエレバ楽天市場Amazon 自社出荷「北海道 清里 原酒5年 700ml」常温北海道 焼酎 じゃがいも ジャガイモ 酒 北海道産 お取り寄せ 贈り物 プレゼント お土産 お中元posted with カエレバ楽天市場Amazon オンラインショップ 清里焼酎醸造所の公式オンラインショップでも購入することができます。 メジャーな3種類だけでなく、飲み比べなどの様々なサイズを取り扱っています。 最後に 今回ご紹介したじゃがいも焼酎「北海道清里」。 様々な人の想いを持った行動や、その想いに感化された人の応援で、これまで50年もの歴史を作ってきました。 さらには、リブランディングを経て、日本国内だけでなく世界を見据えるようになりました。 世界のスタンダードとしてのじゃがいも焼酎をこれからの50年間で造っていくのでしょう。 北海道清里町ならではがぎゅっと詰まった「北海道 清里」。 ぜひ飲んでみてください。

  • 「受け継いで今後に繋いでいく」北海道・清里町でじゃがいも焼酎を造る廣谷さんの想い

    世界自然遺産知床からほど近く斜里岳が悠然とたたずむ美しい町、北海道・清里町。 ここには、自然豊かな清里町の恵みを最大限活かした焼酎造りを営む「清里焼酎醸造所」があります。 そこで主査として清里焼酎醸造所を統括する廣谷さんは、ある想いを持って焼酎造りに取り組んでいます。 今回は廣谷さんに、綿々と受け継がれてきた焼酎造りにかける想いや、今後の展開についてお話をお伺いします。 清里焼酎醸造所主査・廣谷さん 清里焼酎醸造所1975年に、「清里町産として誇れる特産品が欲しい」という町民の声から、日本で初めてとなるじゃがいも焼酎造りを開始。原材料のほとんどが清里町産であり、製造開始から約50年経つ現在でも、町民の間で広く愛されています。2014年にはリブランディングを行うなど、今後さらに世に広まっていくことが期待されます。 清里焼酎醸造所ご提供写真 詳しくはこちらの記事をご一読ください。▼清里焼酎醸造所・じゃがいも焼酎の記事はこちら!<紹介記事リンク> ご経歴:醸造学科を卒業し焼酎の道へ ー本日はよろしくお願いいたします。まずは簡単にご経歴をお伺いできますか? よろしくお願いします。 北海道網走市で生まれ育ち、高校時代に「発酵」に興味を持ちました。その後、東京農業大学醸造科学科に進学して微生物について学びました。 大学卒業後にご縁があり、北海道に戻ってきて、この焼酎蔵で働いています。 現在は勤めてから15年が経ち、主査として「焼酎造り」に広く携わっています。 ーなかなか面白いご経歴ですね!なぜ高校時代に「発酵」というニッチな分野に興味を持たれたのでしょうか? 大きく何かきっかけがあったというわけではないのですが、理由の一つに、お酒などの発酵食品に興味があったことが挙げられます。 また、今でいうSDGsのような環境的持続性を考えるなかで、これからの社会において「発酵」は重要で、微生物を使った醸造学が盛り上がるのではないかと思いました。 専攻としては「酒造り」ではなく、微生物を使った「環境改善」がテーマでしたが、当時学んだことは今でも仕事に繋がっています。 ー先見の明がすごいですね!大学で学ばれた後に、就職に際してUターン(地元に帰って働くこと)されたんですね。 高校時代まで北海道で暮らしていて、働くならやっぱり自分の生まれた場所で働きたいという思いがありました。 その当時、この清里醸造所も後継者がいないということで大学の醸造科に募集をかけていまして、そこで私が手を挙げた形です。 当時の所長は、事業を始めた頃から焼酎造りを一身に受け持ってこられた方で、お酒造りの知識や設備が全く何もないところから、設計など醸造を確立されたんです。 話を聞いてみて、「この人の下でなら働いてみたい」と思い、ここで働くことにしました。 清里焼酎醸造所ご提供写真 新しい焼酎のあり方を考える:リブランディングへの取り組み ー焼酎造りに携わって15年、さらに現在は主査という立場で焼酎造りを統括されていらっしゃいますが、具体的にどのようなお仕事をされていらっしゃいますか? あまり大きくない醸造所ということもあり、醸造から販売まで、自分ができることはなんでも手広く携わっていますね。 醸造のシーズンは醸造にかかりっきりになってしまいますが、それ以外のシーズンは展示商談会に出展したり、取引先への挨拶周りも行っています。 ーこれまでの15年間で印象深い取り組みはありましたか? 2012年ごろから、じゃがいも焼酎全体のリブランディングに取り組みました。 新しい焼酎のあり方を考えながら、職場環境の変化もあったので、変化が多く大変な時期でしたね。 <リブランディングとは・カード挿入> 清里焼酎醸造所ご提供写真 ーデザインがとにかくかっこいい!リブランディングに取り組んだ理由や背景は何かあったのでしょうか? 2003年から続いていた本格焼酎ブームの落ち着きによって売り上げが目に見えて落ちていたことと、その施策として商品種類を増やしていたことがあります。 売り上げに対して何か手を打たなければいけないと考えていました。 そのうえ、商品種類が増えれば増えるほど経費がかかってきますし、デザイン的なばらつきも気になっていたので、デザインを変更できないか、個人的に取り組んでいました。 そんなとき、当時江戸川大学の教授だった、ローカルデザインの第一人者である鈴木輝隆氏のご助力をいただくことになり、デザイン事務所と一緒に焼酎全体のリブランディングに取り組むことになりました。 清里焼酎醸造所ご提供写真 ーリブランディングにおいて廣谷さんはどのような関わり方をされたのでしょうか? デザインをするにあたって、私たち清里町がどのようなことを伝えたいのか、また何を軸にするのかということを明確にする必要がありました。 デザイナーの方にも実際に清里町に来ていただいて、清里町の景観をはじめとした街のイメージを掴んでいただき、私たち職員だけでなく一般の町民の方々を巻き込んで、その軸を決めていきました。 新しいロゴやボトルデザイン、コンセプトに至るまで、全てそのとき決めた軸を中心に作られています。 ▼詳しいリブランディングの話はこちらの記事をご一読ください。 <紹介記事へのリンク> 「受け継いで今後に繋いでいく」廣谷さんの想い 50年近く伝統が続くじゃがいも焼酎を、ただ守るだけでなく、より広く伝えるために“攻め”の施策に取り組む廣谷さん。ここからは廣谷さんの想いについてお話をお伺いします。 ー焼酎造りに携わって15年、さらに現在は主査という立場で焼酎造りを統括されていらっしゃいますが、どのような想いでいらっしゃいますか? これまで50年近く、町民に愛されながら綿々と受け継がれてきたじゃがいも焼酎を受け継いで今後に繋いでいくというのが私の使命であると思っています。 ー素敵ですね!そのような想いをお持ちになった理由は何でしょうか? そもそもじゃがいも焼酎ができたきっかけが、町民の「清里町産として誇れる特産品が欲しい」という想いなんです。 そして、そのような町民の想いをじゃがいも焼酎の生みの親である故・長屋氏が何もない状態からカタチにしていきました。 そのような綿々と紡がれた想いを引き継いだからこそ、清里町が存続する限りじゃがいも焼酎を造り続けていきたいと思います。 そして、これまでの担当者がゼロから作り上げた焼酎の造り方や売り方などを含めて今後の世代に繋いでいきたいですね。 世界を見据えて足元を固める ー今後、そのような想いを伝えていくためにどのような人々に届けたいと思いますか? 第一に、焼酎好きの方に「こんな焼酎もあるんだよ」とお知らせしていきたいです。 それに加え、北海道の本格焼酎に馴染みのない人たちがたくさんいるので、「北海道の地酒としてこんなものがあるんだよ」というのを広く知っていただきたいなと思います。 とはいえ、じゃがいも焼酎の認知度自体がまだまだ低い状態です。 じゃがいも焼酎ってこういうものなんだよ、というところから丁寧に伝えていくことが必要だと考えています。 ー2014年には大々的なリブランディングも行われていますよね。リブランディングをされていかがでしたか? 前のデザインだと焼酎好きの方が買っていくイメージが強かったんですけど、デザイン変更後は普段焼酎を飲まない人にも手に取って選んでいただけるというパターンが増えてきましたね。 本格焼酎は「癖が強い」「飲みづらい」というイメージが先行していますが、うちのじゃがいも焼酎は親しみやすく、焼酎を飲みたがらない方にも受けやすい仕上がりにしています。 品質の特徴とパッケージがぐっと近づいたことで、お客さんにも手に取っていただきやすくなりました。 ー僕もパケ買いしてしまいました!(笑)商品メッセージに「焼酎を世界のスタンダードに。」とありますが、世界を見据えていらっしゃるんでしょうか? ありがとうございます!(笑) でも、世界的に見れば焼酎自体はまだまだニッチでこれからの段階です。 ただ、世界中にあるお酒のなかでも、同じジャンルでこれだけ原材料の幅がある蒸留酒は非常に珍しいんです。そのなかでも、微生物や麹を使って造る焼酎は非常に稀だと言われています。 「SAKE」や「ジャパニーズウイスキー」が世界的にも高く評価されていますが、それらの人気に焼酎も続いていきたいですね。 ー世界に広がるじゃがいも焼酎、楽しみです!今日はありがとうございました! 取材の終わりに たくさんの人の想いのバトンが形になったじゃがいも焼酎「北海道・清里」。 ただ伝統を守るだけでなく、今後の未来を見据えて一本一本丁寧に造られていました。 丸みを帯びた優しい味わいで、これまで焼酎に触れてきていない人にもおすすめです。 知床に行ったら絶対に飲んでみてほしい、そんな逸品でした。 <購入リンク挿入>

  • 【日本一面白い】仕掛けだらけの水族館・北の大地の水族館

    ハッカとカーリングの街・北海道北見市。オホーツク海から大雪山まで伸びる、東西で100kmほどの距離がある北海道一大きい自治体です。 その北見市内留辺蘂(るべしべ)町というオホーツク海から約70kmほどの内陸部に「北の大地の水族館(山の水族館)」があります。 この北の大地の水族館、一周の所要時間が約20分ほどの小さな水族館ですが、ここならではの尖った展示や仕掛けで日本全国にファンがいます。 今回は、そんな北の大地の水族館をご紹介します。 実際に取材に行ったからこそわかる生の情報が詰まっています。 ぜひ最後までご一読ください。 北の大地の水族館とは? 北の大地の水族館・ご提供写真 北の大地の水族館は、1978年に「山の水族館・郷土館」として開業しました。 開業当時、山の水族館の横を通る国道39号線は、札幌から旭川や層雲峡を抜けて北見、網走に抜ける観光の主要国道で、それに伴い温根湯温泉エリア全体が栄えていました。 その頃、網走には「オホーツク水族館」という水族館があり、当時の町長の「網走に海の展示があるのだから、川沿いに山の中の水族館があってもいいじゃないか」という発想で開業することになりました。 海から離れていたこともあり、海水を取水することが難しく、川魚のみの展示でスタートしました。 水族館プロデューサー・中村元氏がリニューアルを手がける たくさんの地元の人たちや観光客から愛された旧山の水族館ですが、開業から30年以上経ち、施設の老朽化が目立ったため、2012年にリニューアルすることになりました。 そのリニューアルに大きく関わったのが日本で唯一の水族館プロデューサーである中村元氏。 中村氏は鳥羽水族館や新江ノ島水族館、サンシャイン水族館などのさまざまな水族館のリニューアルに携わってきました。 中村氏の手法として「水塊 (すいかい)」と呼ばれる、まるで水中にいるかのような感覚と「行動展示」という、ただ生き物を見せるのではなく生態に即して動く姿を見せる二つの手法があります。 この北の大地の水族館でもその二つの手法を随所に見ることができます。 館長の想い「とにかく水族館を楽しんでほしい」 北の大地の水族館・山内館長 リニューアル時からさまざまな展示や企画に携わってきた山内館長は、「とにかく水族館を楽しんでほしい」という想いから、展示の見せ方やお客さんとの接し方など、全てにおいて「ゲストを楽しませる」という軸を大切にされています。 ▼詳しい山内さんの想いを伺った記事はこちら! https://spark-pjt.com/onneyu-aq-interview/ ここにしかない!?北の大地の水族館ならではの展示 ここからは、中村氏や山内館長をはじめとするたくさんの人々が作り上げた、北の大地の水族館ならではの展示についてご紹介します。 北の大地の水族館が位置する北海道・道東の大自然、そして、温根湯温泉エリアの魅力である「豊かな自然環境」「厳しい自然」「豊富な温泉」をダイレクトに感じることができる展示がたくさんあります。 【まるで水中世界】滝つぼ水槽 引用:https://www.photo-ac.com/main/detail/2980134 北の大地の水族館に入ると、はじめに滝つぼ水槽が目に入ります。 ここでは、まるで滝つぼを水中から見上げているような浮遊感を感じることができます。 実はこの滝つぼ水槽ですが、水中感や浮遊感を楽しんでもらうために、さまざまなこだわりが隠されているんです。 その一つが「あえて滝を見せないこと」です。 滝つぼ水槽は、実際の滝と同じように水を高さをつけて落とすことで作られています。 また、水中の循環ポンプで水中から水上に向けて噴き上げるように泡を作ることで、より自然な水中感や浮遊感を感じることができます。 ただ、「滝を見る」のではなく「水中世界を感じてほしい」という想いから、あえて滝の部分は見せないようにしているそうです。 また、もう一つのこだわりが「生態に合った展示方法」です。 滝つぼ水槽で展示されている可愛らしい淡水魚・オショロコマ。 彼らは実際に川の上流に生息しており、滝つぼの縁に多く見られるそうです。 この水族館でも、その姿を再現するために滝から餌を落として水槽の上部に誘導するなど、オショロコマの自然の姿を見ることができるよう、こだわりが隠されています。 【冬は水面が凍る!?】四季の水槽 一つ目の水槽を抜けると見えてくるのが「四季の水槽」。 この水槽は実際に外と繋がっていて、春夏秋冬と毎シーズンごとの北海道の川の水中世界を再現しています。 取材に伺った初夏はエゾウグイが気持ちよさそうに泳いでいましたが、秋口にかけてヤマメや鮭、カラフトマスなど、そのシーズンに合った魚が展示されるので、どの季節に行っても楽しむことができます。 特に目を引くのが「冬の四季の水槽」。 北の大地の水族館・提供写真 外気に触れているので、冬の寒い時期にはこの水槽の表面が凍ります。 旧山の水族館時代には、冬は閉館していましたが、リニューアルに伴い冬も営業を行うことになりました。 北海道の冬は寒さが厳しく、なかなか来館客を引き付けることが難しいと予想されました。 そこで、その寒さを逆手にとって「寒いからこそ見える景色」でお客さんを呼び込もうとしてできたのが四季の水槽。 北の大地の水族館・提供写真 冬の時期の水槽の掃除は、氷の表面に穴を開けて潜水して行います。 一年に2回しか見ることができない冬の掃除のシーン、見逃せませんね。 【日本最大級の淡水魚】イトウの展示 日本最大級の淡水魚である「イトウ」の展示は大迫力。 北の大地の水族館では、イトウの展示に力を入れていて、大きく育ったイトウだけでなく、卵や稚魚も展示しています。 ここまで大きく育つことができるのは、その生息地が栄養豊富だということの証拠。 つまり、北海道の豊かな土壌をイトウの姿から見て取ることができます。 実は昔、イトウは全道的に生息していましたが、現在はその生息域がどんどん縮小しています。 山内館長は「イトウってすごい大きな魚なんだね!すごいね!と感じてもらうことで、自然界での実際のアクションをする人が一人でも増えればいい」と話します。 さらに、山内館長は「イトウは北海道の川や湖においてのアンブレラ種です」と続けます。 「アンブレラ種であるイトウを守ることが、北海道の豊かな河川・湖の環境を守ることにつながります。展示をきっかけにイトウに興味を持ってくれたら嬉しいです。」 ▼アンブレラ種とは地域の生態ピラミッドの頂点にある生き物で、アンブレラ種が生育できる環境を保護することで、その傘下にあるほかの種の生育までをも保全することができ、広い面積にわたる生物の多様性が保たれることになるという保全上の戦略的な考え方。 北海道の豊かな自然に思いを馳せながら、水の中をゆったり泳ぐイトウをぜひ一度見に来てください。 【温泉水で育てた熱帯魚】世界の熱帯魚コーナー 最後にご紹介するのは「世界の熱帯魚コーナー」。 ここで展示されている熱帯魚は、水族館のある温根湯温泉の温泉水で育てられます。 旧山の水族館時代に、冬の閉館時に温泉水で飼育したところ、魚の傷の治りが早かったり、生育が少し早かったことから、温泉水が利用されるようになったそうです。 来館客を楽しませるたくさんの仕掛けへのこだわり 北の大地の水族館では、「お客さんを楽しませる」さまざまな仕掛けへのこだわりが散りばめられています。 数えきれないほどある仕掛けですが、ここでは3つご紹介します。 独創性あふれる手作りのPOP 北の大地の水族館では、各展示の周りに独創性あふれる手作りのポップが所狭しと貼られています。 ニジマスとのLINEのトーク画面やプロフィール帳を模した「うおふぃーる帳」など、刺さる人にはとことん刺さるPOPを楽しむことができます。 館長が出てくるボタン Twitterで一躍有名になったのがこの「館長が出てくるボタン」。 少しでも館内でのコミュニケーションを増やしたい、との想いで2020年の夏に山内館長がスタートしたこの仕掛け。 ボタンを押すと山内館長が出てきて会話をすることができます。 このボタンを設置した詳しい想いや背景については、ぜひインタビュー記事をご覧ください。 https://spark-pjt.com/onneyu-aq-interview/ いただきますライブ イトウの水槽で行われる「いただきますライブ」。 自然では当たり前のように行われているものの、普段は目にすることができない生の「捕食」を目の当たりにすることができます。 ※現在一時的に開催が休止されています。詳しくはHPをご確認ください。 【施設情報】料金・アクセス 施設名北の大地の水族館(山の水族館)公式サイトhttps://onneyu-aq.com/営業情報(営業時間)8:30~17:00 (4月~10月) 9:00~16:30 (11月~3月) 料金一般:670円中学生:440円 小学生:300円支払い方法現金のみアクセス〒091-0153 北海道北見市留辺蘂(るべしべ)町松山1-4車で行く場合(北見市街から) 国道39号線で約40分(旭川市街から) 国道39号線で約2時間30分公共交通機関を使う場合(電車) JR留辺蘂駅から道の駅おんねゆ温泉行きバス約20分。終点下車後徒歩2分。(バス) バスの時刻表は公式HPより駐車場情報あり(無料)普通車37台/身障者用2台

  • 「水中世界を楽しんでほしい」北の大地の水族館館長・山内創さんの想い

    北海道北見市から車で1時間ほどの場所にある「北の大地の水族館(山の水族館)」。 ここは他の水族館とは一味違う、館内には来館者を楽しませる仕掛けだらけの「徹底的にふざける」水族館。 その背景には、2012年のリニューアル当初から中心にいる山内さんの姿があります。 今回は山内館長に、北の大地の水族館にかける想いや、さまざまな仕掛けの裏側についてお話をお伺いします。 北の大地の水族館館長・山内創さん 北の大地の水族館1978年に開業。2012年には水族館プロデューサーである中村元氏が手がけ、リニューアルオープン。「滝つぼ水槽」を代表とする目を引く水槽や独自性のある展示など、来館者を楽しませる仕掛けが各所に散りばめられています。 ご経歴:移住して水族館の館長に ー本日はよろしくお願いします。まず簡単にご経歴のご説明をお伺いできますか? よろしくお願いします! 愛知県で生まれ、小さい頃から魚をはじめとする生き物が大好きでした。 自分で生き物を育てていた経験から、いつか水族館の飼育員になりたいと思っていました。 大学では海洋系の学部に所属し、その後にここ、北の大地の水族館にて採用され、小さい頃からの夢を叶えることができました。 ー縁もゆかりもない北海道に移住ですか!不安はありませんでしたか? 当時は「どこでもいいから水族館で働きたい」という思いの方が強かったです。 むしろ小さい頃からの夢を叶えられるということで高揚感もありました。 働き始めてからスタッフやお客さんなど、いろいろな人と関わることで、よりこの水族館のことが好きになりましたね。 今は館長として、普段の水族館の運営からさまざまな企画まで携わっています。 「とにかく水族館を楽しんでほしい」 2012年のリニューアル当初より水族館の運営に携わってきた山内さん。水族館での勤務を通して、館長になった現在まで、ある想いを大切にしていると言います。 すごくシンプルですが「とにかく水族館を楽しんでほしい」という想いで普段お客様と接しています。 「どうやったら楽しんでもらえるか」、それだけを考えて館内での仕掛けやさまざまな活動に取り組んでいます。 ーその想いを抱くようになったきっかけは何かあったのでしょうか? 実際に水族館で働いた経験が大きいです。 それこそ学生時代は「水族館は生物を見せる場所であって、生き物のことを正しく伝えることが重要」だと考えていました。 でも働き始めてから、お客さんがすごく楽しんでくれている姿を見る機会がたくさんありました。 そのときに「水族館は訪れる人にとって、ただいるだけでも楽しい場所なんだ!」と気付きました。 私自身は魚がすごく好きで、魚を見ているだけで楽しいんです。 でも、一般の人がそうでないことは、知識として知っていても実感はなかったんですね。 実際に働き始めて、老若男女いろいろなお客さんの姿を見て、「別に魚を好きじゃなくても楽しんでくれているんだ!」というのをちゃんと感じることができました。 だからこそ、魚が好きではない人にも楽しんでもらえるような、親しみやすい水族館を目指しています。 ーそうなんですね。それでいうと館内のさまざまな仕掛けでは「楽しませてやる」という気持ちをひしひしと感じます。(笑) 結局、水族館が楽しくないと魚のことを知ろうと思ってもらえないんですよね。 ポップなどの仕掛けを通して「楽しかったね!また来たいね!」と思わせることで、魚を好きになってもらう第一歩になるんじゃないかと思います。 そして「あの水族館楽しかったね」の思い出の中に一つでも、「そういえばさ、あの魚って〇〇らしいよ。」といった会話があれば嬉しいです。 普段は「どうやったらお客さんに楽しんでもらえるか」ばっかり考えていますし、だからこそ、LINE風の紹介やプロフィール帳を模した展示などを作って、楽しんでもらえるように心掛けています。 「全力でふざける」さまざまな仕掛け 山内さんが館長を務める「北の大地の水族館(山の水族館)」には、「とにかく水中世界を楽しんでほしい」という想いをカタチにしたさまざまな仕掛けがあります。 その仕掛けについて「全力でふざけることが大事」と話す山内館長。 最大公約数を狙うのではなく、刺さる人にとことん刺さるように作られているんです。 だからこそ、北の大地の水族館では他の水族館では見ることができない珍しい仕掛けを楽しむことができます。 その一つが「館長が出てくるボタン」。 ーTwitterでもバズっていた「館長が出てくるボタン」。なぜ始められたのでしょうか? さまざまな狙いはありますが、最初はとにかく暇で作りました(笑) このボタンは2020年の7月に設置したのですが、当時は緊急事態宣言による休館や、開館していてもお客さんが来ない状態が続きました。 やっぱりお客さんに楽しんでもらうことが自分の楽しみなので、お客さんが来ないと寂しくてかまってほしくて、勝手に設置してしまいました。(笑) 設置当時は面白がってもらえるかな、とは思っていましたが、まさかこんなにバズるとは思っていませんでした。 ーちなみにどのような狙いがあったのでしょうか? 館内でのコミュニケーションを増やすことが狙いでした。 当館は小さな水族館で20〜30分で一周してしまうんです。 でも、小さい水族館の中でお客さんとのコミュニケーションを増やすことで、滞在時間も増えて満足度も高くなる。 そしてさらに、私たちが伝えたいことを伝えやすくなると考えました。 ー結構押されるお客さんは多いんですか? 正直なところあまりいません。月に10回ほどです。 押してくれるお客さんも、「これを聞きたい!」という内容があるというよりも、この発想を面白がってボタンを押してくれる方ばかりですね。 「面白かった展示は?」「好きな魚は?」など、私から質問することもあります。 とにかく水族館を楽しんでもらうきっかけになっていたら嬉しいです。 北見市民に愛着を持ってもらえる水族館をめざす 山内さんの「楽しませたい」という想いはとどまるところを知らない。 今後の展望を話していただきました。 ー今後、その想いをどのような人に届けていきたいといった展望はお持ちですか? 水族館の足元である北見市の人たちに「地元の水族館」という意識を持ってほしいです。 北見市は10数年前に一市三町が合併してできた道内で一番広い自治体なんです。 端から端まで100kmもあるほど広く、しかも水族館はその端に位置します。 北見市内には、北の大地の水族館が北見市の施設だと認識していない人がたくさんいます。 それってすごくもったいないし、寂しいですよね。 今はとにかく北見市の市民に「まちの水族館」だと感じてほしいです。 きっと観光客も、地元の人が楽しいよって言ってるところに行きたいのではないかと思います。 ー素敵ですね!今後北見市の人たちに対して何か新しい仕掛けは考えられていらっしゃいますか? 今年でリニューアルオープンから10年を迎えますが、その10周年記念事業として「出前水族館」を開催します。 とても広い北見市、その中の一つ一つの自治体をまわって、一日水族館をお楽しみいただきます。 移動式だからこそ楽しんでいただけるような、さまざまなコンテンツを用意しています。 ▼出前水族館について詳細はこちら!https://www.city.kitami.lg.jp/administration/news/detail.php?news=854 他には、より親しみやすい水族館になるためにガイドツアーができたらいいなと考えています。 ぜひそのツアーの中でも全力でふざけて楽しませていきたいですね。 ー山内さんの「全力でふざける」。今後も楽しみにしています!今日はありがとうございました。 取材の終わりに 今回訪れた「北の大地の水族館」。 小さいながらもその密度は今まで体感したことのないほどで、「楽しんでほしい」をピュアに突き詰めた、山内さんをはじめとする飼育員の方々の努力を垣間見ることができました。 今回の取材で2回目の来訪。きっと3回目のタイミングは思ってるよりも早く来るのだろう。 ぜひ道東に行くときは一度訪れてみてください。